奄美群島エコツアーガイド自主ルール

~自然と共存する持続可能な奄美群島を目指して~

 

 

主旨

 

私たちが暮らす奄美群島。その歴史と文化は、私たちの祖先が自然に対して畏敬の念を抱きつつ、自然の恩恵を受けながら育まれてきました。

奄美群島にふりそそぐ太陽エネルギー、きれいな水、空気、豊かな土壌、それらに育まれる動植物、祖先から受け継ぐ祭りと祈り。「豊かで健全な自然、祭りと祈り」は、私たちがこの島で生きていくための「公共の財産」であり「土台」です。私たちは、この大切な「財産」、生きていくための「土台」を将来に引き継ぐ義務があります。

また、国際的なキーワードとなっている「持続可能な社会」は、自然との共生なくしてはありえません。各地域での「自然と共生した持続可能な社会づくり」が、ひいては地球規模での環境問題の解決にもつながります。

私たちは、この愛する島々で生きていかなければなりません。そのためには、これ以上、公共の財産である自然を破壊せず、豊かな島々の自然、歴史、文化を保全し、かつてのこれらを蘇生する必要があります。

したがって、私たちエコツアーガイドは、島々の人たちが大切にしているものと密接にかかわる業務であることに誇りと自覚を持つとともに、自然、歴史、文化を活かし、地域社会の振興と自然環境の保全と蘇生に貢献し、牽引する役割を担うものです。奄美群島に暮らす人、さらに、訪れる人、みんなが楽しく自然と共存した持続可能な島々にするために、以下の項目に関するルールを自ら定め、実践していきます。

 

項目

 

1 自然に関して

2 歴史・文化・生活に関して

3 ツアー参加者に関して

4 そのほか

5 附則


【1 自然に関して】

 

(1)動植物の保護

① 保護に関しては、国・県・市町村、関係機関が定める禁漁(猟)期間等の法律や条例を遵守します。

② 国・県・市町村の法律や条例によって定められた動植物および全レッドデータリスト記載種の採取は行ないません。

③ 上記の他の種についても、希少又は貴重と思われるものの採取は行わないようにするとともに保護に努める。

④ 上記に反した採取を行っている人や罠を発見した場合、明らかに法律・条令等に違反しているときは、然るべき機関へ速やかに通報するようにします。特に罠に関しては、所有権の問題があるため、記録に留め、むやみに撤去したりしないように注意します。また、自ら罠で怪我したり、罠での負傷者を発見した場合、速やかに応急処置を行うようにします。

 

(2)動植物への影響の軽減(ローインパクトの実践)

① 動植物への影響を軽減させるための正しい知識を修得するように努力します。

② 植物への踏圧による影響を軽減させるため、既存道からできる限り外れて歩きません。

③ サンゴへの影響を軽減させるため、十分に注意します。

④ 陸上、水中を問わず、動物種ごとの干渉距離(人間の干渉を受けない距離)を把握し、出来る限り尊重します。特に繁殖期間中の動物の観察、撮影には細心の注意を払います。

⑤ 体験プログラム上、動物を観察する場合は、損傷させないように気をつけます。また、観察のために動かした木や石等は元の状態に戻します。

⑥ 原則として動物は、捕獲しません。

⑦ 夜間の動物観察は、動物に与える影響が大きいため、自動車や手持ちライト等の光量を最小限に留めます。特に哺乳類や鳥類、休息している昼行性動物(魚類も含む)などには細心の注意を払います。

⑧ 動物がライト等に驚いた場合、逃げていくのを追いかけたり、隠れた動物を探したりしません。

⑨ ロードキル防止のために、観察中は極力スピードを控えて走行します。特に小型の両生類、爬虫類、甲殻類などは発見しづらいために、晴天時は時速20km以下、雨天時は時速10km以下で走行します。

⑩ 立ち入り禁止区域、車両乗り入れ禁止区域には入りません。また、動植物への影響が大きいと考えられる区域へも入りません。

⑪ 動植物への影響の軽減を図るために、通年のコアゾーン(利用不可区域)、期間を定めるコアゾーンなど、独自のゾーニングを行います。

 

(3)外来種への対応

① 外来種対応のための正しい知識を修得するように努力します。

② 外来種を放さない、植えないようにします。

③ 外来種を放させない、植えさせないように努力します。

④ 正しい手法に従った外来種の除去に協力します。

⑤ 外来種に関する情報の収集、提供を行います。

⑥ 公共工事等で外来種持ち込みが予想される場合、行政と地元専門家が連携して事前チェックを行う。

⑦ 外来生物を「入れない、捨てない、拡げない」ようにします。

 

(4)自然及び文化的景観の保全・復元

① 景観および生態系の保全・復元に関して、さまざまな提案を関係機関に行い、景観および生態系の保全・復元を積極的に推進します。

② ゴミの分別、条例に基づいた処理を行うことはもとより、漂着ゴミの除去なども関係機関とともに協力して推進します。

③ ツアー参加者とともに景観を保全するプログラム(クリーンアップ作業や外来種の除去、在来植物の植樹など)を出来るだけ行います。

④ 白い砂浜を損ねる直火など、自然の中で火入れ・たき火は行いません。

 

(5)その他

① 大気汚染や地球温暖化防止のために、アイドリングストップや二酸化炭素排出抑制に努めます。

② 水質汚染・汚濁防止に努めるとともに、赤土流出などを発見した場合には関係機関に速やかに連絡します。

③ 土壌汚染防止のために、自ら化学薬品や化学肥料等の使用を控えるとともに、土壌保全に留意した農産物の購入を出来る限り行い、土壌保全を推進します。

 

 

【2 文化・生活に関して】

 

① 奄美群島の歴史・文化・生活習慣に関して、正しい知識を有するように努力します。

② 住民の生活習慣、伝統文化を尊重し、正しく伝えられるよう努力します。

③ 農林水産業等の地元産業の妨げにならないように注意します。

④ グリーンツーリズムやブルーツーリズムをはじめ、地元産業との連携を研究し、新たな産業の振興に努めます。

⑤ エネルギーの節約および地域振興のために「地産地消」を推進するとともに、エコロジカルな地元産業の振興に貢献します。

⑥ 伝統行事に参加する際には、事前に地元関係者と調整を図ります。

⑦ 各地域が大切にしている神聖な場所への立ち入りにおいて、許可が必要な場所に関しては、必ず事前に地元責任者の許可を得ます。

 

 

【3 ツアー参加者に関して】

 

(1)情報提供

① 楽しくなる情報を提供します。各ツアー参加者のレベル・年齢・ニーズを踏まえ、季節と場所に最も適した手法(解説する、五感で体験していただくなど)で、情報提供を行い、「各島の人たちが自然や守るべき資源を大切にしていることがわかる」「自然があると楽しい」と実感していただける最高の旅をプロデュースします。

② 「審査部会」の判断した正しい情報を提供します。事前の広報(ウェブサイトやチラシ等)での正しい情報提供はもとより、私たちがご案内するツアーが動植物および自然に与える影響(インパクト)、奄美群島の歴史や文化について、正しい情報を提供します。「影響はありません」などと誤った情報を提供するのではなく、どのような影響を与えているのかを伝えることにより、ツアー参加者の皆さんが「人間生活と自然の関わり」を改めて考え、エコロジカルなライフスタイルをより実践するきっかけとなるような旅をプロデュースします。

③ 従来の利便性、快適性のみを追い求めるツアーではなく、「楽しい情報」「正しい情報」を提供することにより、質の高い旅をプロデュースします。

 

(2)安全確保

① ツアー参加者の安全を保つために、天候、場所、生物などの危険に対する対処法を常に学びます。また、ツアー催行中は、常に危険予測を怠らず、生命への危険が及ぶと予測される場合には、ツアーは催行しません。

② ツアー参加者の体調の変化に常に注意し、体調が悪化した場合には適切に対応します。また、適切に対応できるように、救急救命講習等を受講し、技術の習得に努めます。

③ 予測される危険について、ツアー参加者へ事前に情報を提供します。

④ 事故を発見した場合には、ガイド中であっても全面的に協力して被害者、要救助者の救済を優先します。

 

 

【4 その他】

 

① 動植物の採取や影響の軽減、地元住民への配慮等が特に必要な場所については、個別のルールを策定します。

② 動植物への影響の軽減、地元産業との軋轢の回避、お客様の満足度の向上等のために、利用が重なるような場所に関しては、利用時間等の調整が図れるような連絡体制の整備を図ります。

③ 事故発生等の不測の事態に対応するために、緊急連絡体制の整備を図ります。

④ 質の高いツアーをお客様に提供できるために、ガイドの資格や認証制度への積極的関与およびガイドの技術を高めるための研修会等を実施します。

 

 

【5 附則】

 

(1)対象者

・奄美群島エコツアーガイド自主ルール(以下本ルール)の対象者とは、奄美群島でツアー参加者等に対してガイドを行っており、奄美群島エコツアーガイド連絡協議会に参加する企業・団体・個人とします。

 

(2)対象地

・奄美群島全域とします。

 

(3)本ルールの実施

・平成24年4月1日より実施するものとします。

 

(4)本ルールの改正

・改正にあたっては随時行うものとし、奄美群島エコツーリズム推進連絡協議会において協議のうえ、決定するものとします。

 

(5)各島ルールの制定・改正

・奄美群島各島で自然環境・地質等異なる部分もあるので、奄美群島エコツーリズム推進各島協議会において協議のうえ、群島自主ルールの附則として制定し、改正を行う。

 

≪集約版≫

 

対象分野

自然全般(山、川、海、森、野生生物、エコトーンなど)、歴史、文化、産業、生活など

※文章中の“アマミ”とは、奄美群島の自然や野生の生きもの達、歴史、文化、産業、人々の生活など全てのものを、1つの“いきもの”としてとらえて称しています。

 

1 “このルールに賛同する”というグループで実践していくもので、強制的に加盟させるものとはしない。

2 一度作ったら決定というものではなく、成長し続けるルールとする。いろいろな人に意見を聞き、賛同を得るのと同時に、ルールの幅も広げていく。

3 ルールは罰則や強制力は持たないが、各ガイドが実践することで強制力を持たせる以上の実績を積み上げるものとする。

 

目的                                                  

1 奄美群島で観光ガイドをする際に、その自然や歴史、文化等を破壊せず、守り、育むための基本的な考えをまとめるものとする。

2 ルールやマップなどを基に、自然環境保護への配慮,観光産業と地域振興へのあり方などについて関係機関と連携し融合を促すものとする。

 

私たち奄美群島エコツアーガイドは、

ガイドを通じて、奄美群島のおもしろさ・すばらしさ・大切さ・危うさを伝えていきます!

奄美群島の自然や歴史、文化を、ツアー参加者の皆さんと一緒に守り、育てていきます!

アマミ(※)に負担をかけないガイドを通じて、心に残るすばらしい旅のお手伝いをします!

 

奄美群島エコツアーガイドに参加すると・・・

収益の一部は、アマミの自然や歴史、文化などを守るために使われます。

この分配基準については、各島ガイド組織の会議で協議する。

“地域の魅力”を紹介することで、地域の人たちもまるごと元気になります!

時にはツアー参加者や地域の皆さんも一緒に、アマミを守り、育むために汗を流します。ビーチクリーンや外来種の駆除など、ぜひご参加ください。

 

奄美群島エコツアーガイドのルール

私たちがガイドを行う時は、各フィールドで次のことに注意しながら行います。

もちろん一般のガイドと同様に、安全面にも留意し、楽しく快適な旅をご提供します。

 

PR方法

1 印刷物(チラシA3両面、ポスターA2)を空港や店頭、各観光施設、行政、商店などに配布し、群島民へのPRと同時にツアー参加者へPRしてもらう。

2 別に賛同した団体等の一覧表を差し込むものとする。

3 新たな賛同者も随時募集する。

4 各協力者のホームページやSNSを活用する。

5 観光案内所、行政のホームページに掲載してもらう


奄美群島エコツアーガイド心得≫

 

奄美群島は、山が多く河川が流れる島、起伏が少なく地下水系が発達した島などが存在し、地形・植生・そこに見られる生き物など多様で独特な自然を有しています。また、そのような自然環境と気候・風土に裏付けられた伝統的文化を築き上げてきました。私たち「奄美群島ガイド」は、優れた奄美群島の自然の中でガイドという仕事を通じて多くの人々に自然や文化のすばらしさを紹介し,理解していただくことで、自然と共生する島づくり、並びに貴重な自然環境の保全に寄与しているという誇りを持って、エコツーリズム憲章を尊重し、次の心得に基づいて活動します。

 

1 奄美群島エコツアーガイドとしての「責任」を持って、奄美群島の自然環境の保全に努めます。

2 奄美群島エコツアーガイドとしての「自覚」を持って、奄美群島の自然を通して自然のすばらしさ, 大切さを伝えていきます。

3 奄美群島エコツアーガイドの「役割」として、地域に根ざした活動を行います。

 

 

奄美群島エコツアーガイド共通ルール

 

① 利用者の安全を最優先に考え行動する。

② 警報発令中はもちろんのこと、津波・竜巻注意報や台風・地震による注意報発令時には、危険が予想される場所でのガイド活動は行わない。

③ ツアーにあたって、安全管理上の注意やフィールドでの配慮事項を十分に伝える。

④ 奄美群島における環境保全関係法令等を遵守する。

⑤ 特定資格を必要とする活動(スキューバダイビング等)については、資格を有しない者は行わない。

⑥ 各集落の水源の取水口箇所より上流(約一キロ)の沢での活動は行わない。

⑦ 水場の上流を汚さない、踏み込まない、水質汚染防止に留意する。

⑧ ガイドを行う際、事前にトイレのある場所を確保し、そこで済ませる。どうしてもトイレのないところで用を足すときは、湿原、水場、沢、美観地区を避け、トイレのある場所に移動する等各々で処置をとり、環境を保全する。

⑨ 怪我、事故には、ガイド同士協力し合って対処する。

⑩ 野生生物に餌を与えない。

⑪ 心得や共通ルールに基づいて、来訪者に対してより良い利用の協力を促す。

⑫ 山に動物を連れて行かない。(盲導犬、介助犬、聴導犬を除く。)

 

⑬ ガイドの活動する地域の農業者、林業者、漁業者、その他企業や居住者とのトラブルや苦情が発生しないよう、事前の理解を求めるようにする。